小噺
こんばんは。もだくんです。
ここで小噺を一つ。
ある男が道端で小さな蛙を見つけました。
「ゲコちゃんこんにちは。」
男がそう声を掛けて近づいても、蛙は微動だにせずじーっとこっちを見続けました。
男は不思議に思いつつも通り過ぎようとしましたがその瞬間、
「ゲコ。」
と一鳴き。
その鳴き声に男が振り向くと、蛙はまだこちらを見ていました。
その夜、男はなんだかあの蛙が気になって眠れません。
なんとか眠りにつこうと、男は苦手な酒を飲み、床につきました。
蛙、蛙、蛙、、、
普段なら一杯ですぐ寝てしまうのに今日は全く眠りにつけません。
「なんだあの蛙は。俺の心に入ってきやがって。俺は下戸なんだぞ。」
男はなんだか誘われるようにして、あの蛙を見つけた場所まで夜道を歩きました。
男があの場所へ着いた時、昼間の蛙はまだそこにいて男をじーっと見ていました。
男は少し驚いたものの、
「おいこのゲコ助!なんだ何が言いたいんだ言えるもんなら言ってみろバカ」
少し虚勢を張って蛙に文句を言いました。
しかし。当然、蛙は何も言いません。
男は溜息をつき、急にバカバカしくなり、帰ろうと元きた道を振り向きました。
その瞬間、
「ゲコちゃんこんにちは。」
明らかにそう言った蛙に対し、男は腰が抜け、思わず倒れました。
怖くて、恐ろしくて、逃げ出したい状況の中、なんとか声を絞り出し、男はこう言いました。
「時間的にはこんばんは。なんだけど、お笑いとしてはこんにちは。で大丈夫、、、。」
fin.
男はお笑い養成所の変に細かい講師(下戸)。
もだくん